介護用手すりの種類や選び方|レンタルや補助金についても知ろう
介護用手すりは、高齢者や介護が必要な方にとって転倒を防止したり、行動を広げたりするために大切な役割を担っています。
しかしたくさんの種類がありすぎて「どれを選んだらいいの?」「購入とレンタルどっちがいい?」とお悩みの方がいるのではないでしょうか。
本記事でわかることは次のとおりです。
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記事を読めば介護用手すりの種類や選び方、安く設置する方法などがわかるようになるでしょう。正しく選択して安全な生活にお役立てください。
介護用手すりには介護保険の補助金を利用できる
介護が必要な方の自宅に手すりを設置する場合には、介護保険の補助金を利用できるのをご存じでしょうか。たくさん設置すると費用がかさむので、利用できるのであれば利用しましょう。
利用するためには、要介護認定を受けているのが条件です。まだ要介護認定されていない方は、先に要介護認定の申請をすませましょう。
要介護認定の申請については、以下の記事をご覧ください。
→要介護認定とは?要介護度別の特徴とサービス利用までの流れをご紹介
介護保険で利用できる以下2種類の手すりについて説明します。
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実際、レンタルする方がよいのか、住宅改修工事をした方が良いのか迷うことがあるでしょう。それぞれの特徴や費用目安、メリットデメリットなどについて見ていきましょう。
福祉用具レンタルの手すり
福祉用具レンタルで利用できる手すりは、設置に関して工事が不要な、以下のような手すりが対象です。
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福祉用具レンタルは、介護が必要な方が自宅で住み続けられるように、安い料金でレンタルできる制度です。要支援・要介護認定されている方であれば、定められた13種類の福祉用具を1割分(高所得の方は2~3割)の費用負担で借りられます。
わかりにくいと思うので、具体的な費用負担について説明しましょう。
通常手すりのレンタル費用は1つにつき3,000円前後です。介護認定されていて自己負担割合が1割の方であれば、費用負担は、月額300円前後になります。
13種類の福祉用具に関して、貸与の件数と費用を調査した下のグラフ(黄色の折れ線グラフ)からは、特殊寝台付属品に次いで手すりの利用件数が多いとわかります。
(引用:介護保険制度における福祉用具貸与・販売種目のあり方検討会(第1回) 「介護保険制度における福祉用具、居宅介護支援について」)
費用負担が大きくなく、設置位置を自由に変更できるなどの利便性の良さから、利用者が多いといえるでしょう。
住宅改修の手すり
介護保険を利用した手すりの設置では、レンタル以外に住宅改修工事も可能です。住宅改修の手すりは、設置の際に壁や床にとりつける工事が必要であり、容易に持ち運べないものを指します。
住宅改修費用に対する介護保険の利用上限金額は最大20万円で、そのうち1割分は自分で支払います。また、住宅改修を利用した工事をする前には、必ず事前に申請して許可がおりてからでないと助成金がおりません。ケアマネジャーなどに相談して事前に申請するのを忘れないようにしましょう。
具体的には以下のような手すりがあります。
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確実に設置したい場所などに利用しましょう。
福祉用具レンタルと住宅改修の手すりはどっちがいい?
レンタルと購入のどちらがよいのか悩む方もいるでしょう。それぞれにメリット・デメリットがあるため、説明します。
福祉用具レンタル | 住宅改修 | |
メリット |
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デメリット |
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福祉用具の一番のメリットは、設置や取り外しが容易なため、身体の変化や都合にあわせて簡単に変更できる点です。その一方で、安定性に欠ける可能性があり、不安定さによる事故も報告されているため、定期的にチェックする必要があるでしょう。
住宅改修の手すりのメリットは、安定性や設置場所がかさばらないことです。工事で取り付けるので外れることはまずないでしょう。また、壁に直接手すりをつけるので、場所をとりません。
一方デメリットとしては、容易に取り外せないので身体の変化などにあわせて変更できない点、設置場所を誤っても修正ができない、設置に時間がかかることなどがあげられます。
どちらかにこだわらず、工事までの間レンタルを利用したり、家の中でレンタルと工事を使い分けたりするなどして、臨機応変に利用できるとよいでしょう。
(参照:財団法人テクノエイド協会「手すりを上手に使う その人に合わせるために」)
(参照:独立行政法人製品評価技術基盤機構「手すりの事故防止対策報告書」)
介護用手すりの種類
ここからは介護用手すりの種類について見ていきましょう。工事が必要な手すりと必要のない手すりに分けて紹介します。
工事不要のもの
据え置き(床置き)型
床に置いて使用するタイプです。一言で床置き型といっても、いろいろな長さや形のものがあるので専門家に相談して選びましょう。
突っ張り型
天井につっぱって利用するタイプの手すりです。突っ張り棒と突っ張り防の間に手すりを設置することで、手がかりがない場所にも自由に手すりを設置できます。
工事による取り付けが必要なもの
工事をして壁に設置するタイプの手すりです。動作をする場所に合わせて縦手すり、横手すり、L字型などさまざまな形のものがあります。
行う動作や設置場所の状況などにあわせて、どの手すりが良いのか選ぶのです。
介護用手すりの効果
介護用手すりでは、次のような効果が見込めます。
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段差や滑りやすい箇所に設置することで、転倒防止につながります。階段への設置では転落を防ぐ効果も見込めるのです。
転倒転落の防止以外では、動作の補助としても役立ちます。ベッド横やトイレなどに設置した手すりでは、起き上がりや立ち上がり動作を手助けします。また、歩く経路に手すりがあると歩行しやすくなるでしょう。
このように生活の安全性を高めるとともに、動作の制限を緩和して行動範囲を広げるためにも使えます。
介護用手すりの取り付けの目安
介護用手すりの設置位置の目安について説明します。
あくまでも目安であり、体格や動作の個人差によって適切な位置は異なることに注意しましょう。
手すりの高さ
手すりの高さは、風呂で立ち上がる際に使うのか、歩行の際に使うのか、トイレからの立ち上がりのために使うのかなどによって大きく異なります。そのため、手すりで補助したい動作にあわせて考える必要があるのです。
例として、歩行に使用する手すりの高さの目安を示します。人間生活工学研究センターの調査によると、すべての年代で780mm~880mmの高さがちょうどよいとの結果が出ましたが、年齢や性別で異なる結果となりました。
トイレや浴室など、動作ごとの取り付け位置に関しては、TOTOのサイトでわかりやすく解説されています。
(参照:一般社団法人人間生活工学研究センター「ちょうど良い手すりの高さ」)
(参照:TOTO株式会社 「手すりカタログ」)
太さ
握りやすい太さは、32mm~45mm程度とされています。手のひらの大きさや握る力などの違いに合わせて調整が必要です。
高さや太さの数値はあくまでも目安であり、ご本人の身体状況や住宅構造に合ったものを選びましょう。
手すりを選ぶ際には、ケアマネジャーや福祉用具事業者、理学療法士や作業療法士など多職種と協力して、実際の動作や家の構造を確認して選ぶのが理想的です。そのうえで福祉用具レンタルを利用するのか、住宅改修工事で取り付けるのかなどを決定するとよいでしょう。
ご本人の動作にあわせて決定すると、その後の適切な利用にもつながります。合わない手すりは役に立たないばかりか事故につながる恐れもあるため、注意しましょう。
(参照:厚生労働省「福祉用具ヒヤリハット事例集2019」)
介護用手すりの場所別取り付け例
ここからは、介護用手すりの場所別取り付け例を紹介します。
それぞれの場所で、工事による手すり、工事不要な手すりの両方を示します。選ぶ際の参考にしてください。
玄関
玄関は段差がある家が多く、段差付近に手すりを設置することが多いでしょう。
工事による手すり
工事で取り付けるため、最小限のスペースで、安定して設置できます。
工事不要な手すり
工事が不要で、かつ段差に対応できる手すりです。ある程度重さがあり安定性も重視されています。ベース(下に設置する部分)の面積が必要です。
トイレ
便器の横や前方などに、立ち上がるための手すりを設置します。
工事による手すり
便器の横や前方の壁などに手すりを設置すると、立ち上がり動作や座位の安定に効果的です。
ドアの開閉や方向転換の際に転倒しないように、ドア付近に縦手すりなどを設置することも多くあります。ドアの位置やトイレの広さによって、手すりを設置する場所が異なります。
工事不要の手すり
トイレを左右の手すりで挟み込んで固定するタイプのものがあります。
風呂
風呂場はすべりやすく転倒のリスクが高い場所です。立ち上がる・座るなどの動作を安定して行うためや、移動時の転倒防止に利用します。
工事による手すり
浴槽の横にL字型の手すりなどを設置して、浴槽のまたぎ動作を補助します。また、浴槽の横の壁には、立ち上がりを補助するための手すりを設置します。
出入口付近は非常にすべりやすく転倒が起きやすい場所です。縦手すりを設置することで、ドアの開閉などの安定性が増します。
工事不要な手すり
壁の構造などで工事が難しい場合には、浴槽に取り付けるタイプの手すりが設置可能です。浴槽をまたぐ際に使用します。また、濡れに強い設置型の手すりもあります。
介護用手すりを効果的に使って安全な生活を目指そう
介護用手すりは、転倒転落の防止や動作の安定性のために効果的です。工事が必要な手すり、工事不要な手すりなど多くの種類があるため、家の構造やご本人の身体の状況などに合わせて選びましょう。選ぶ際には、ケアマネジャーを始め多くの職種に相談すると、効果的な利用につながりやすいです。
介護保険を利用すると安く利用できるため、要介護認定の申請をしていない場合には、まずは申請することをおすすめします。手すりを効果的に使って、安全な生活を目指しましょう。