介護リフォームで失敗しない!介護保険の活用や事例も紹介
ご家族が高齢になってくると転倒などが心配になってきませんか。高齢になっても自宅で住み続けるためには、自宅を住みやすくリフォームするのが重要です。適切なリフォームは、要介護者の安全を守ると同時に行動範囲を広げることにつながり、介護者の負担の軽減にも役立ちます。
リフォームしたいと思っても「失敗したらどうしよう」「リフォームを安くする方法はない?」と不安に思う方がいるのではないでしょうか。
本記事では以下を紹介します。
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費用を抑えながら効果的に介護リフォームをして、ご家族の安全を守り、介護負担を軽減するためにお役立てください。
介護リフォームとは
介護リフォームとは、足腰が弱った高齢者や病気の後遺症などで要介護となった方が、住み慣れた自宅で生活し続けられるように、自宅をリフォームすることです。
できるだけ安全に生活することを目指して、バリアフリー構造にしたり、浴室に暖房設備を入れたり、要所要所に手すりを設置したりします。「住宅改修」とも呼ばれ、介護保険から補助が出ます。
介護リフォームを、いつどのようなタイミングでするべきなのか、迷われる方もいるでしょう。目的や考えるタイミングについて見てみましょう。
目的
介護リフォームの目的は次の通りです。
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要介護者の安全を守るだけではなく、介護者の負担を軽減するのにも役立ちます。
特にトイレや廊下、浴室、玄関などを整えておくと、自分でできることを増やしたり行動の幅を広げたりできて、足腰のさらなる衰えの防止にもつながるでしょう。
リフォームの効果
要介護度別にリフォーム経験者に対して実施したアンケートがあります。リフォームによって、状態が改善した動作についてまとめました。
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介護用のリフォームをすることによって、生活に必要な動作全般で改善が見られることがわかります。
(引用:シルバーサービス振興会 平成 26 年度 老人保健事業推進費等補助金老人保健健康増進等事業「在宅虚弱高齢者の生活を支える福祉用具・住宅改修のあり方に関する調査研究事業調査結果報告書」)
考えるタイミング
介護のためのリフォームをするタイミングについて、厚生労働省では早めの備えを推奨しています。なぜなら、住みやすい空間を整えることで介護予防や健康維持にもつながるからです。
平成25年に、介護用のリフォームや転居を考え始める時期について調査した報告では、「自分または配偶者の日常生活に不便がでてきたら」が48.9%で1位、「自分または配偶者が要介護・要支援の状態になったら」が25.7%で2位でした。
(引用:内閣府「平成26年版高齢社会白書(全体版)」)
早めの備えを推奨されている一方で、実際には不便が出たり、介護が必要になったりしてから考える人が多いとわかります。
次章では、不安が大きい費用面への対策として、介護保険を利用して安く抑える方法について解説します。
(参照:国土交通省「高齢期の健康で快適な暮らしのための住まいの改修ガイドラインの概要」)
介護のためのリフォームには介護保険から補助金(助成金)が出る
要支援・介護認定されている方であれば、介護のためのリフォームには、介護保険から助成金が出ます。「介護保険居宅介護(介護予防)住宅改修費」との呼び名で、国で定められた工事だけが対象です。
要介護認定されていない方は、リフォームを考える前に、必ず要介護認定の申請をすませましょう。
要介護認定の申請については、以下の記事をご覧ください。
→要介護認定とは?要介護度別の特徴とサービス利用までの流れをご紹介
ここでは、以下について説明します。
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1つずつ見ていきましょう。
適用条件
介護リフォームに介護保険を利用する前には、以下の条件を満たす必要があります。
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(参照:厚生労働省「居宅介護住宅改修費及び介護予防住宅改修費の支給について」)
大前提として、要介護か要支援と認定されている必要があります。
原則利用者が自宅にいることとなっていますが、入院中などのやむをえない事情の場合には例外として申請できます。また、ケアマネジャーなどに理由書を書いてもらい、工事に着手する前に申請しなければいけません。事前の申請が必須なので、押さえておきましょう。
支給限度額
住宅リフォーム費用のうち、一人につき一生涯で最大20万円まで受給できます。また、その場合の自己負担額は1割(一部高所得の方は2~3割)です。
つまり、20万円かかる工事を、自分では2万円支払うだけで行えるということです。注意点としては、上限金額は20万円だということ。20万円以上かかった工事に関しては、全額事故負担になります。
助成金の支給は一生涯で1度が原則ですが、前回の工事後から介護状態が重くなり、介護度が3段階以上上がった、転居したなどの場合には、改めて20万円まで受給できます。
介護保険の住宅改修でできる工事は5種類
助成金が出るといっても、どのような工事でもよいわけでありません。以下に該当する5種類に限られます。
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(参照:厚生労働省「介護保険における住宅改修」)
風呂に関しての記載はありませんが、福祉用具や段差解消工事などで問題が解決できない場合には、またぎやすい浅い浴槽に変えるなどの工事も対象です。各工事において細かい条件などがあるため、事前にどのような工事を希望して受給したいのか、相談して申請するのが大切です。
事前申請して認められないと助成金は受けられないので注意しましょう。
介護保険によるリフォームの申請手順
介護保険による住宅改修の申請手順について説明します。
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ポイントとしては、工事前に申請して通らなければ補助がおりないということ。必ず事前申請をしましょう。
また、工事終了後にも事後の申請書類を提出(基本的には業者が作成)する必要があります。
介護保険による住宅改修の補助制度のほかにも、多くの自治体で独自の補助制度があります。補助制度の有無や、受給の条件を自治体の役所に確認しておくとよいでしょう。
(参照:一般社団法人住宅リフォーム推進協議会「地方公共団体における住宅リフォーム支援制度検索サイト」)
介護リフォーム事例|費用はどのくらい?
ここからは介護リフォーム事例と費用についてみていきましょう。
65歳以上の高齢者対象に、将来希望する住宅の工事について質問したアンケートがあります。「手すりの設置」「段差をなくす」「浴槽の取り換え」の順に、希望者が多い結果となりました。
希望が多かった3種類の工事について、実際の支払い事例を紹介します。
(参照:内閣府「平成14年版 高齢社会白書」)
段差解消と手すり工事の事例
手すりと段差の解消を中心に実施された工事の事例を示します。工事の合計金額は23,2000円でした。工事の詳細を以下に示します。
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手すり1本は数万円であることが多いため、手すりと段差に限った工事であれば、介護保険の支給範囲内におさまる可能性が高いでしょう。
(参照:鹿児島県住宅リフォーム推進協議会「バリアフリー住宅リフォーム事例集」)
浴室やトイレ一式の変更工事
両上下肢に不全麻痺がある方の住宅改修例です。もともと居住空間が2階だったのを、1階に移動するための工事を実施しています。
工事内容 | 費用 |
玄関ホール改修一式(スロープなど) | 210,000円 |
寝室改修一式 | 580,000円 |
台所改修一式 | 910,000円 |
居間改修一式(和室をリビングダイニングへ) | 470,000円 |
和式トイレを洋室トイレへ改修 | 940,000円 |
風呂(2階だったため1階に新設) | 1,200,000円 |
合計 | 4,310,000円 |
トイレの変更には数十万円、浴槽の変更には100万円以上の費用がかかります。浴槽やトイレの本格的なリフォームをする場合には、介護保険の助成金ではおさまらず、自己負担の費用が大きくなることを注意しておきましょう。
業者によっても対応範囲や費用が異なるので、ケアマネジャーに紹介される信頼できる業者の複数から見積もりをとるとよいでしょう。
(参照:鹿児島県住宅リフォーム推進協議会「バリアフリー住宅リフォーム事例集」)
工事費用の平均金額は18万円
平成27年に一般社団法人シルバーサービス振興会が実施した調査によると、実際工事を行った方の平均金額は約18万円で、介護保険に治まる工事を実施している人が多い結果でした。
ただし結果は介護度などに関係なく、全員の平均金額になっています。予算や必要性、レンタルで代わりができないのかなどをよく相談して、費用をおさえられるとよいでしょう。
(参照:シルバーサービス振興会 平成 26 年度 老人保健事業推進費等補助金老人保健健康増進等事業「在宅虚弱高齢者の生活を支える福祉用具・住宅改修のあり方に関する調査研究事業調査結果報告書」)
介護リフォームでの失敗例
介護リフォームでは、高齢者が対象になるために失敗や契約への不満が多数報告されています。公表されている失敗事例のいくつかを紹介します。
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介護リフォームでは多くのトラブルが報告されています。契約自体のトラブルなどで困ったら消費者生活センターなどに早めに相談しましょう。
工事後のトラブルは、公益財団法人住宅リフォーム・紛争処理支援センターの「住まいるダイヤル」で、無料相談ができます。国土交通大臣指定の相談窓口です。
(参照:公益財団法人住宅リフォーム・紛争処理支援センター「住まいるダイヤル」)
(参照:厚生労働省「全国介護保険担当課長会議資料」)
介護リフォーム業者を選ぶポイント
失敗しない介護リフォームのために、業者を選ぶポイントについてまとめました。
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失敗例にもありましたが、介護リフォームに慣れていない会社ではトラブルが起きやすいものです。リフォーム実績が多い会社をおすすめします。独自の基準でチェックした、推奨業者を公表している自治体もあるので、確認するとよいでしょう。
また、介護リフォームにおいては、福祉住環境コーディネーター(高齢者や介護が必要な方の生活環境を考える仕事)や理学療法士(身体状況の確認やリハビリをする仕事)にも相談できるのが理想です。自宅やご本人の身体状況に基づいて、今後の見通しもたてながら適切な改修を提案してもらえるでしょう。
料金は業者によって異なります。見積もり金額や、希望通り工事がしてもらえるのかなどについて、複数の業者に相談して見積もりを出してもらうことをおすすめします。
業者と話し合った内容は、必ず書面に残しておきましょう。トラブルを回避するためにも、契約時にはご家族も同席できるとよいでしょう。
見積もり段階での不明点や契約に関しての困りごとは、公益財団法人住宅リフォーム・紛争処理支援センターの「住まいるダイヤル」に相談できます。
(参照:公益財団法人住宅リフォーム・紛争処理支援センター「住まいるダイヤル」)
介護用リフォームの費用を抑えて効果的に行うためには専門家に相談しよう
介護リフォーム費用を安く抑えるためには、介護保険の活用が大切です。要介護認定されていない方の場合には、まずは要介護認定を申請しましょう。
リフォームにおいてはトラブルも多数報告されています。工事で失敗しないためにも、ケアマネジャーや複数の専門家に相談したうえで、介護リフォームに慣れた業者に依頼しましょう。本記事を読んで、ご家族の安全を守る満足できる介護リフォームができるようにお役立てください。