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【はじめての方向け】介護食とは?基本の作り方や楽に用意するコツをご紹介

介護食は、食べる力(かむ力や飲み込む力)が落ちてきた方でも食べやすいように調理された食事です。

高齢者や要介護の方は食べる力が落ちやすく、通常の食事が食べにくくなったりむせやすくなったりします。そのようなときにすすめられるのが介護食です。

しかし「作り方がわからない」「いろいろな種類がありすぎてどれが良いのかわからない」と悩む方がいるのではないでしょうか。

本記事を読めばわかるのは次のとおりです。

  • 介護食のレベル分けと対応するレシピ
  • 介護食はかむ力や飲み込む力に合わせて用意する
  • 作る際のポイントや楽に用意する方法
  • レトルトや宅配の介護食の選び方

下記の機関のデータを参考に解説します。

  • 日本摂食嚥下リハビリテーション学会 「嚥下調整食分類 2021」
  • 日本介護食品協議会「ユニバーサルデザインフード」
  • 公益財団法人政策医療振興財団研究助成「介護に役立つ食生活ハンドブック」

記事を読んで実践すれば、基本的な介護食が作れるようになり、時短で用意する方法もわかるでしょう。食べる力が弱ったご家族のためにお役立てください。

介護食とは

介護食とは、食べる機能(かんだり飲みこんだりする機能)が低下した方でも食べやすいように、食材や調理方法を工夫した食事のことです。最近は、栄養不足に備えたい方向けの栄養補助食品も含めることがあります。

加齢や病気によって「かむ力」や「飲み込む力」が低下すると、今まで通りの食事だと飲み込みにくくなったりむせたりすることが出てきます。

食べにくいまま食べ続けると高まるリスクは、誤嚥(食道に入るはずの食べ物が誤って気管に入り込むこと)や栄養不足です。誤嚥は肺炎や窒息にもつながりかねず、避ける工夫が大切です。

介護食は、食べる力が低下してもできるだけリスクを抑えて食べられるように工夫されています。

介護食のレベル分け(区分)と対応するレシピ例

介護食は、力や飲み込む力によって適切な形状が異なります。介護食を考えるうえでは以下2つの側面それぞれについて、適したレベルのものを選びましょう。

  • 食事(主食、おかず)の形状
  • 水分につけるとろみの濃度

1つずつ説明します。

食事のレベル分け(区分)

介護食(主食やおかず)は、レベル(形状)によってペースト食、刻み食など、さまざまなものがあります。適した形状を選ぶのが大切です。

しかし同じ形状でも施設や病院によって呼び方が異なり混乱しやすかったために、介護食品会社が共同で基準を設けました。介護食品会社の基準に沿ってレベル分けした介護食を「ユニバーサルデザインフード」と呼びます。

左側が常食に近い形状で、右側にいくほど食べる力が低下した方向けです。

ユニバーサルデザインフードの区分表(レベル分け)

区分(形状) 容易にかめる 歯茎でつぶせる 舌でつぶせる かまなくてよい
かむ力の目安 かたいものや大きいものはやや食べづらい かたいものや大きいものは食べづらい 細かくてやわらかければ食べられる 固形物は小さくても食べづらい
飲み込む力の目安 普通に飲み込める ものによっては飲み込みづらいことがある 水やお茶が飲み込みづらいことがある 水やお茶が飲み込みづらい
かたさの目安

と調理例

ごはん~やわらかごはん やわらかごはん~全がゆ 全がゆ ペーストがゆ
厚焼き卵 だし巻き卵 スクランブルエッグ やわらかい茶碗蒸し(具なし)

(引用元:日本介護食品協議会「ユニバーサルデザインフード」より一部抜粋して表を作成)

介護食のレベルとレシピを考える際には、ユニバーサルデザインフードに合わせて考えると、基準から大きく外れずに作れるのがメリットです。そのためユニバーサルデザインフードのレベルと対応するレシピ例を用いて説明します。

1 容易にかめる

「容易にかめる」レベルは、かむ力がわずかに弱いけれど、飲み込む力は保たれている方に適しています。ユニバーサルデザインフードの区分の中ではもっとも通常の食事に近く、見た目は大きく変わりません

作る際には、とくに誤嚥・窒息しやすいもの(かたい・ばらけやすいものなど)を取り除いて作ります。

対応するレシピとしては、「やわらか食」や「軟菜食」などと呼ばれているものが近く、指宿市の「健幸レシピ集」に多数掲載されています。

(参考:指宿市「普段の食事をやわらかく 食べやすく~介護食の健幸レシピ集が完成しました! 」)

2 歯茎でつぶせる

「歯茎でつぶせる」レベルは、かむ力や飲み込む力が両方とも、軽度に落ちている方に適しています。

かたい・大きなものがかみにくいほか、たまに飲み込みにくいものがあると感じる方でも食べやすい形状です。

「容易にかめる」レベルと同様に、誤嚥や窒息しやすいものは避けたうえで、粒の大きさは少し小さめになっています。食品形態としては、煮魚、煮込みハンバーグ、厚焼き玉子などが目安です。

「容易にかめる」と「歯茎でつぶせる」レベルの線引きは明らかでなく、同じ程度のものを指すこともあります。

介護に役立つ食生活ハンドブック」の後半に、ご家族用の料理を介護食にアレンジする目安が掲載されています。確認するとイメージしやすくなるかもしれません。

(参考:公益財団法人制作医療振興財団研究助成「介護に役立つ食生活ハンドブック」p53~p55)

3 舌でつぶせる

「舌でつぶせる」レベルは、かむ力や飲み込む力が落ちている方に適しています。多少の粒や形があるものの、舌でつぶせる程度のやわらかさが特徴です。

飲み込みの力が落ちている方でも食べやすいように、多少粒があっても口や喉に残りにくい「あんかけ状」や「ゼリー状」などのまとまりやすい形状になっています。

病院や施設などでは「刻みあんかけ食」「ソフト食」などと呼ばれることもあります。食品形態としては、魚レシピであればはんぺん煮、肉ならばテリーヌなどが目安です。

作る際には、食材をミキサーにかけてからゼリーやあんかけ状にしてまとめたり、小さく刻んであんかけ状にしたりする方法があります。

(参考:介護食・腎臓病食(低たんぱく食品)のお役立ち情報「柔らかくて食べやすい!舌でつぶせる介護食のレシピ特集」)

4 かまなくてよい

「かまなくてよい」形状は、かむ力・飲み込む力が両方低下していて、小さい固形物でも食べにくい方向けの食事です。食事全体がゼリーやピューレ、ペースト状といったまとまりやすい形状になっています。

作る際には、ミキサーやざるを使って滑らかな形状にしたものを、ゼラチンやとろみ調整食品(液体にとろみをつける粉末:とろみ剤)を使ってゼリー状やペースト状にする方法があります。

(参考: 介護食・腎臓病食(低たんぱく食品)のお役立ち情報「ペースト状の介護食の作り方!お手軽な手作りレシピと便利な通販もご紹介 」)

このように一言で介護食といってもいろいろなレベルがあります。基本的にはご家族と同じ料理を用意した後に、取り分けたものを食べやすく加工すると、手間が省きやすいでしょう。

水分の形状

さらさらの水分は喉にすばやく流れ込むため、飲み込みの力が低下していると難しいものです。そのため、うまく飲み込めない方には、飲み込みの力に応じて「とろみ調整食品(とろみ剤)」を入れてとろみをつけます

とろみ調整食品の分量を増やすと、とろみの濃度が濃くなります。

とろみ調整食品は、ドラッグストアなどでも入手可能です。

介護食はかむ力や飲み込む力に合わせて用意する

介護食にはさまざまな種類があること、状態にあった物を選ぶ必要があることをお伝えしました。

選ぶ際には以下を基準に選びましょう。

  • 嚥下機能や咀嚼機能に合わせる
  • 専門家に相談する

食事の形態も水分のとろみも、ご本人のかむ力や飲み込む力に合わせたものを選ぶのが大切です。ご本人の力がわからない場合には、主治医や栄養士などの専門家に相談するとよいでしょう。

介護食を作るポイント|食材の選び方と調理方法

介護食を作る際に共通するポイントについて説明します。

ご本人の状態に合わせて必要な部分を取り入れてください。

やわらかい食材

かむ力や飲み込む力が低下した方には、かたすぎるもの・パサつくものは避ける方が無難です。

選び方の目安は、下の表をご覧ください。

食材 選び方
やわらかい部位を選び、鶏肉は皮を使わない
やわらかめの身でほぐしやすいもの
野菜 新鮮でやわらかくて食べやすいもの

(参考:国立長寿医療研究センター・東浦町作成「健康長寿教室テキスト第2版」P27)

同じ栄養素のグループの中でも、かみやすいものを選ぶとよいでしょう。

食べやすくする調理方法

食べにくい食材は避けた方がよいものの、食べたい場合には食べやすく調理しましょう。食べにくい(かみにくい、飲み込みにくい)食材と食べやすくする調理方法を表に示しました。

食べにくい食材 食べやすくする調理例
サラサラの液体や水分が多いもの とろみをつける
パサパサしてつまりやすいもの 油分を加える、スープや飲み物と交互に食べる
口の中や喉でパラパラになりまとまりにくいもの とろみやつなぎを利用してまとまりやすくする
かたくてかみにくいもの

(繊維の多い野菜、いか、たこなど)

すりおろす、ピューレ状にする、圧力鍋でやわらかく煮る
口や喉に貼りつきやすいもの 主食と炊いておじやにするなど

(参考:「嚥下障害食の考 え方 と調理の工夫」

パラパラ、パサパサなどの口の中や喉でばらけやすいものは、水分やあんかけ、油と混ぜてしっとりさせると飲み込みやすくなります。

介護食を楽に用意する方法

介護食の作り方がわかったところで、できるだけ時短して楽に用意する方法を説明します。毎日のことなので、介護する方の負担を軽減できるような工夫が大切です。

調理器具を活用する

ペースト食を手で作るのは手間がかかるため、調理器具を利用して時短しましょう。

便利な調理器具の例を示します。

  • ミキサー
  • ミル(水分が少ない食品でも粉砕できる)
  • すり鉢・すりこぎ
  • 圧力なべ

(参考:佐世保市役所「作ってみよう!介護食」)

ミキサーは非常に便利ですが、量が少ないと利用できないものがあります。介護食の量が少ない場合には、少量でも利用できるミキサーをおすすめします。

家族と同じものを取り分ける

介護食だけ別に作ると時間がかかります。家族と同じものを作ってから、取り分けて介護食用に加工すると、材料や時間を効率化できます。ご家族の料理に、だし汁や煮汁などの水分を足してミキサー状にするなどして調理しましょう。取り分ける際にかたいものや筋などがあれば、取り除いてから調理するとよいでしょう。

ご家族用の食事をレベルに合わせた介護食にアレンジする方法を表に示します。表の左端がご家族用の通常の食事で、右に進むにしたがって飲み込みやすい調理をしたものです。

通常の食事と介護食用の調理方法

食事のレベル 基本(通常の形態)の食事 歯茎でつぶせる 舌でつぶせる かまなく良い
メニュー例 野菜オムレツ 茶碗蒸し風オムレツ
ごぼうとにんじんの煮物 やわらかめの煮物 ごぼうとにんじんに分けてすりつぶす 基本の煮物をミルにかけて煮汁でのばしてとろみ調整食品を添加する

(参考:佐世保市役所「作ってみよう!介護食」)

介護に役立つ食生活ハンドブック(p53以降)」にはご家族用のレシピを介護食の形状に合わせて調理する方法が記載されていて、わかりやすいです。作る際の参考になるでしょう。

(参考:公益財団法人制作医療振興財団研究助成「介護に役立つ食生活ハンドブック」)

【レトルトや宅配】市販されている介護食の種類や選び方

「家で作るのが大変……」そのようなときは市販の介護食を利用しましょう。最近ではドラッグストアやスーパーでも手に入ります。

市販の介護食の例を示します。

  • ユニバーサルデザインフード(レトルト)
  • スマイルケア食(レトルト)
  • 宅配食

ユニバーサルデザインフードとスマイルケア食は、基準を作った団体が違うだけで「レベル分けされた介護食」という点では同じです。

どちらにどのような種類があって…と覚える必要はありません。ユニバーサルデザインフードにもスマイルケア食にも、いくつかの質問に答えれば適した商品がわかる「フローチャート」が用意されていて、ホームページや店頭でチェックできます。

購入する際に見ながら選べば大丈夫です。

(参考:日本介護食品協議会「わかるユニバーサルデザインフード」)

(参考:農林水産省「スマイルケア食早見表」)

宅配食は各社いろいろな商品を出しています。生のもの、冷凍、対応している食事形態などさまざまあるので、資料を取り寄せてみましょう。

介護食の作り方や楽に用意するコツを知って安全な食事に役立てよう

介護食とは、かむ力や飲み込む力が低下した方でも食べやすいように、食材や調理方法を工夫した食事のことです。さまざまな形状があるので、その方の力に合わせて選ぶのが大切です。どの食事が合っているのかわからない場合には、主治医や栄養士、言語聴覚士などの専門家に相談しましょう。

作る際には、ご家族分のお料理から取り分けて作ると手間が省けて時短になります。用意がしんどいときには市販のレトルトや宅配食などを利用することをおすすめします。

ご家族が食べやすい食事を整えて、健康的な生活を送るためにお役立てください。

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