居宅介護支援とは何をするの?訪問介護との違いやサービス内容の流れを解説
「要介護認定の親を自宅で介護したいけれど、どんなサービスを受けられるの?」
「そもそも居宅介護支援って何をするところ?」
こうした疑問をお持ちの方もいるでしょう。
居宅介護支援とは、要介護認定を受けた方が最適な介護サービスを受けられるように、ケアマネジャーが「介護サービスの計画書」を作成して各事業所と連携を取ってくれるサービスです。
この記事をご覧になることで、
- 居宅介護支援の定義
- 居宅介護支援と訪問介護の違い
- 居宅介護支援の利用条件
- 居宅開土支援の利用方法と流れ
といった内容がわかります。
最後までぜひご覧になり、要介護者とご家族の介護生活の参考になさってください。
居宅介護支援とは
居宅介護支援は、要介護者(要介護認定1〜5の方)が自立した生活ができるよう、厚生労働省令で規定された資格を持つケアマネジャー(介護の専門家)が行うサービスです。
ケアマネジャーは、生活環境や心身状況などを考慮して、要介護者が最適な介護サービスを受けられるようにケアプラン(介護サービスの計画書)を作成してくれます。
作成されたケアプランを基に、介護サービス事業所や自治体との連絡調整を図るとともに、介護サービスの実施をケアマネジャーが導いてくれます。
※要支援認定1〜2の方も支援を受けられますが、この場合「介護予防支援」の利用となり、地域包括支援センターが担うものです。
(参照:厚生労働省「公的介護保険制度の現状と今後の役割」)
居宅介護支援の定義
厚生労働省による居宅介護支援の定義として、次のように記されています。
<定義>【法第8条第24項】 ○居宅の要介護者が居宅サービス等の適切な利用ができるように、
① 要介護者の心身の状況、置かれている環境、要介護者や家族の希望等を勘案し、居宅サービス計画を作成
② 居宅サービス計画に基づくサービス提供が確保されるよう、サービス事業者との連絡調整
③ 介護保険施設等への入所が必要な場合における紹介 等を行うこと。
(参照:厚生労働省:「居宅介護支援の基本資料」)
居宅介護支援は、要介護者に直接行う介護サービスではなく、ケアマネジャーが適切なケアプランを作成し、対応する公的機関に連絡・調整を行います。
居宅介護と訪問介護の違い
居宅介護はケアマネジャーが介護サービスの連絡・調整役になり、間接的なサポートを行うもので、要介護者やその家族の相談先は「居宅介護支援事業所」のケアマネジャーです。
相談を受けたケアマネジャーが「買い物や掃除のサポートが必要」あるいは「入浴のサポートが必要」と判断した場合に「ケアプラン(介護サービスの計画書)」を作成し、そのサポート内容を訪問介護事業所に連絡・調整を図ります。
一方、「訪問介護」とは介護保険法の介護保険制度に基づく介護サービスを指し、介護保険の主軸となる居宅サービスです。
具体的には、ホームヘルパーや介護福祉士が直接要介護者の自宅に向かい、生活・身体サポートを直接行います。
居宅介護と訪問介護の両者は「在宅介護」を行いますが、いずれも全く異なるものです。
さらに、障害福祉サービスで提供される「居宅介護」は障害者総合支援法が規定する支援の総称となり、いずれも「在宅サービス」になりますが、制度は全く異なるので混同しないように注意が必要です。 |
(参考:厚生労働省「介護保険制度の概要」)
居宅介護支援の利用条件
居宅介護支援の利用条件として、介護認定の要介護1〜5に該当する方がサービスを受けられます。
要支援などの要介護以外の場合、居宅介護支援の対象外のため「介護予防支援」を利用すると良いでしょう。
ここでは、居宅介護支援の利用条件について、次の2点をわかりやすく説明します。
- 居宅介護支援の利用条件
- 居宅介護支援の対象は要介護1~5の認定を受けた方
- 要支援の方は介護予防支援を受けられる
また、要支援や要介護認定の目安がわかるので、認定を受けてない方は参考にしてみてください。
居宅介護支援の対象は要介護1~5の認定を受けた方
居宅介護支援の対象者は、要介護認定の要介護1〜5に判定された方が利用可能です。
要介護状態とは、日常生活の基本的動作(一人歩き・起き上がり・排泄・食事)等を自身で行うことが困難で「介護が必要」な状態の方をいいます。
要介護状態の目安として次の表をご覧ください。
要介護度状態 | 日常生活の動作など |
要介護1 |
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要介護2 |
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要介護3 |
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要介護4 |
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要介護5 |
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(参考:印西市「介護が必要な状態の目安」)
上記をご覧のように、心身・認知状態によって、介護度も重くなり介助も必要となります。
(※居宅介護支援は要介護者が利用できますが、各人によって状態も異なるのでご了承ください)
要支援の方は介護予防支援を受けられる
要介護認定で要支援1〜2と判定を受けた方は「介護予防支援サービス」の利用ができます。
介護予防支援も目的は、要支援1〜2の方が心身状態の悪化を防ぐための設けられたサービスとなり、日常生活の維持向上や、改善などを目的としています。
介護予防支援サービスは介護保険が適用され、要支援1の方は要支援2の場合よりも若干費用が抑えれれています。
要支援状態の目安は次の通りです。
要支援度状態 | 日常生活の動作など |
要支援1 |
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要支援2 |
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介護予防支援サービスの相談窓口は、市区町村役場が設置する「地域包括支援センター」になります。
介護予防支援では、要支援者の対象者に対し、健康状態や日常生活の予防的な維持・向上といったサポートを行います。
居宅介護支援と同じく、ケアマネジャーがケアプランを作成し、介護予防サービスの調整・連絡を行ってくれます。
居宅介護支援は自費負担なしで利用可能
居宅介護支援の利用は、全額を介護保険から給付されるため、自費負担なしでサービスを受けられます。
通常、介護保険サービスは利用者本人の所得によって1〜3割を負担する必要があり、10,000円分の介護サービスを利用した場合は1,000円(2割の場合は2,000円)を支払う必要があります。
一方、居宅介護支援が自己負担を設けないのは、要介護者ができる限り自立した日常生活を送ることが居宅(在宅)での介護支援では重要であると考えられているからです。
さらに、要介護者の自己負担によって、支える家族や要介護者本人が支援の利用を抑えることで、心身状態のさらなる悪化を招く恐れがあることから、居宅介護支援には全額を保険給付としています。
居宅介護支援の利用方法と流れ
ケアマネジャー(介護支援専門員)は、専門的な知識と経験を駆使して、要介護者や家族の意思決定を支援し、多種多様なサービス事業所と連携を取りながら要介護者を支えています。
居宅介護支援の利用方法と具体的な流れは次のとおりです。
- 居宅介護支援事業所を選ぶ
- 事業所と正式い契約する
- ケアマネジャーを選任する
- ケアマネジャーは要介護者宅を訪問して情報を把握(アセスメント)する
- 介護関係者が揃って話し合いを行う
- ケアプランを作成する
- 介護保険サービスの利用開始
- ケアマネジャーによる月1回以上の訪問を面接(モニタリング)がある
ここでは、居宅介護支援サービスの流れを確認しましょう。
要介護認定を受ける
居宅介護支援の利用には、介護認定の「要介護認定」を受ける必要があります。
まずは、お住まいの市区町村役場の「高齢者福祉の窓口(介護保険課)」あるいは「地域包括支援センターの窓口」で、要介護の申請手続きを行いましょう。
要介護者が病気や入院などして外出できない場合は、家族や親戚が代理人として申請することもできます。
(※地域によっては居宅介護支援事業所や地域包括支援センターの担当者、または介護施設に入所している場合は、当該保険施設の担当者が代行する場合もあります。)
居宅介護支援事業者を選ぶ
要介護認定を受けて介護保険証が送付されたら、要介護者やご家族が居宅介護支援事業所を選ぶ必要があります。
通常、居宅介護支援事業所は、各市区町村であらかじめ指定しており、要介護認定の通知とともに作成された事業所一覧も配布されることでしょう。
事業所一覧には、居宅(在宅)サービス一覧として、多くの事業者名が記載されていますが、初めての場合は情報もわからず不安はつきものです。
要介護者との相性はもちろん、ご家族も安心して預けることのできる「良質な事業所」を選択するためにも、まずは市区町村役場の担当窓口でアドバイスを受けるとともに事業所を紹介してもらうと良いでしょう。
事業所と正式に契約する
希望する居宅介護支援事業所が決まったら、正式な契約を行って「居宅介護支援サービス」の利用を開始します。
契約後、事業所との「相性が合わない」場合や「納得できない」「不安がある」といったときは、途中で変更することも可能です。
要介護者やご家族が安心して利用できることを第一に、決して我慢せずにその旨をきちんと伝え、再度希望する事業所に連絡しましょう。
ケアマネジャーを選任する
居宅介護支援事業所の契約後、ケアプラン(介護サービスの計画書)を作成してくれる「ケアマネジャー」を選任します。
ケアマネジャーとは、作成したケアプラン(介護サービスの計画書)を基に、今後関わる介護サービス事業所などの連絡・調整を行うコーディネーターをいいます。
ケアマネジャーは、長い介護生活に深く関わる重要な人物のため、要介護者やご家族との相性や価値観の合致は非常に大切です。
安心して任せられるケアマネジャー選びのポイントとして、まずはご近所や地域の知り合いで介護サービスを受けている方の情報を得ると良いでしょう。
なお、ケアマネジャー選びには相性以外に以下のポイントも見逃せません。
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ケアマネジャーの対応次第で今後の介護生活に大きく影響が現れるため、ケアマネジャー選びは慎重に検討し、万が一不安に感じる場合は変更も可能です。
(※一人のケアマネジャーが担当する利用者数は法律で規定されており、制限数を超える場合は選任できないため注意してください)
ケアマネジャーは利用者宅を訪問して情報を把握(アセスメント)する
ケアマネジャーは、要介護者の最適な介護方法を検討し、より具体的な介護対策を練る必要があります。
そのためには要介護者の生活状況をより深く理解し、あるいは現在の心身状況を深く把握しなければなりません。
例えば、「背中が曲がって歩きにくく杖が必要」「足腰が痛くて一人で歩行できない」「認知症の症状があるようだ」等、要介護者本人やご家族からの聞き取りや、一歩踏み込んだ細やかな調査が必要です。
こうした対策全般を「アセスメント」と呼び、聞き取り確認の他、要介護者やご家族からの具体的な要望を収集し、最適なケアプラン(介護サービスの計画書)作成へとつなげています。
介護関係者が揃って話し合いを行う
アセスメントによって作成されたケアプランの詳細内容や方向性を確認するため、ケアマネジャーを中心に、介護関係者による話し合い(サービス担当者会議)が行われます。
サービス担当者会議に参加する方は次の通りです。
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基本的に要介護者の自宅での話し合いになりますが、部屋の状況や担当者が集まれない等の場合は、他の施設の部屋を借りて開催することもあります。
ケアプランを作成する
アセスメントの内容を基に、ケアマネジャーはケアプラン(介護サービスの計画書)の作成をはじめます。
要介護者が自宅で自立した生活を送れるように、適切なサービスを盛り込んだ内容に同意することで、居宅介護サービスの利用が開始されます。
介護保険サービスの利用開始
ケアマネジャーを通じて提供された「各サービス事業所」と正式に契約を行い、ケアプランに従って介護サービスがスタートします。
お手元にはサービスを受ける様々な事業所の書類が多いことでしょう。
具体的には、利用契約書・重要事項説明書・居宅サービス計画書・施設サービス計画書・訪問介護計画書など多岐に渡ります。 介護保険サービス事業所では、これらの書類の保存期間が「介護保険サービスの終了後2年間」と規定されています(厚生労働省令)。 居宅介護を受ける側も、サービスの変更や確認のためにも各種書類は大切に保管するようにしましょう。 |
ケアマネジャーによる月1回以上の訪問と面接
介護保険サービスが開始されると、ケアマネジャーは毎月1回以上の訪問と要介護者・ご家族への面接を行い、状況に応じてケアプランの変更等を行います。
要介護者の心身状態は日々刻々と変化しており、前回のケアプラン作成時には「できていた」ことでも今回は「できなくなった」という変化も起こります。
要介護者の生活の自立の向上を促すことはもちろん、ご家族の負担が少しでも減軽するよう、ケアマネジャーの訪問時には全ての不安や悩みなどを積極的に相談し、安心して介護に取り組めるようにしましょう。
居宅介護支援のまとめ
居宅介護支援は、要介護者をはじめご家族が長い年月にわたり利用するサービスです。
こうした利用者が不安なく快適に利用できるのも、ケアマネジャーとの相性は非常に大きく、介護への不安や将来的な悩みも、何でも相談できるケアマネジャーを選ぶことが重要です。
支援への遠慮は決してなさらず、居宅介護支援サービスを最大限に利用し、ご家族の心身的な負担を少しでも軽くしていきましょう。