介護休暇は介護と仕事を両立する制度!詳細と取得ポイントをご紹介!
いざご家族に介護が必要になったとき、仕事との両立を図るための選択肢の一つとして考えるのが「介護休暇」です。しかし実際にどのような制度かを知らなければ、効果的に活用することができません。
「介護休暇」について知って、介護と仕事の両立する際の選択肢を増やしましょう。選択肢が増えれば、あなたの生活にベストな両立方法が見つかる可能性が高まります。本記事では、介護休暇の内容と取得の際のポイント、申請方法をご紹介します。
介護休暇とは
介護休暇とは、労働者の家族が要介護状態になった際に、介護と仕事の両立を図るための制度です。あなたが実際に取得できるかどうかに着目しながら、介護休暇の内容と取得に必要な条件を確認していきましょう。
介護を目的とした短期休暇
介護休暇とは、家族が要介護状態になったときに短期で休暇を取得できる制度です。介護休暇を上手く活用すれば、退職することなく介護と仕事を両立できることがあります。
休業するほどではないけれど、通院の付き添いや介護サービスの手続き代行、ケアマネージャーとの打ち合わせなどに利用できるため、ご家族に介護が必要になったときにまず利用してもらいたい制度です。
有給休暇とは別に取得することができるため、ご家族の身体状況やサービス利用状況によって併用して、効果的な休暇の取得を検討しましょう。
対象家族1人につき年間5日間の取得が可能
介護休暇は対象になる家族1人につき年間5日間の取得が可能です。なお対象家族が2人以上になると、年間最大10日までの取得ができます。
さらに介護休暇は時間単位で取得ができるため、必要な時に必要な時間だけ取得できるというメリットも。直接的な介護に利用することはもちろん、相談・手続きなどの間接的な活用も問題ありません。
「直接的な介護は兄弟に任せているから、間接的な部分で積極的に関わりたい」「まずは短期間で介護と仕事の両立ができるか試してみたい」など、仕事との両立を前提として活用できる制度です。
法律で定められた権利
介護休暇は、法律で定められた労働者としての権利です。「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」で規定されています。
それにも関わらず、2019年に大和証券が行った調査によると、2006年には約5万人だった介護離職者は2017年には約9万人と約2倍に増えています。近年では正規雇用の介護離職者も増加しており年齢層は40~50代であることから、企業の立場からも「労働力の確保」という点で問題視されています。
少子高齢化に伴って今後も仕事をしながら介護を担う方が増えると想定されるため、いかに制度を利用して介護と両立をするかが課題となるでしょう。
休暇中の賃金の有無は職場次第
介護休暇中の賃金の有無についての現状は、結局のところ職場次第です。「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」において、休暇中の賃金について定められているわけではありません。
企業に就業規則がある場合にはこれに則って休暇を取得・有給処理する企業も一部ありますが、事業主に給与を支払う義務はないという点を理解しておきましょう。介護休暇取得の際には、担当部署に申請方法を確認しておくと同時に、賃金の有無についても確認しておくことをおすすめします。
雇用期間・所定労働日数を満たせば取得可能
介護休暇は、雇用期間・所定労働日数を満たせば取得が可能です。1日ごとに契約満了する日雇い労働者でなければ、以下の方が対象になります。
- 対象となる要介護2以上の家族を介護する必要がある労働者。
- 入社6ヶ月以降の労働者。
- 1週間の所定労働日数が3日以上の労働者。
上記の条件を満たせば、正社員以外のパート・アルバイト・契約社員でも取得ができます。要介護2とは、食事や排せつなどの身の回りのことに対して部分的な介護・見守りが必要な状態です。それぞれの身体状態によりますが、要介護者の中にはデイサービスや訪問介護・訪問看護などを利用する方も多くいます。
介護休暇利用の際に知っておきたいポイント
介護休暇を利用する際には、以下の点をチェックしましょう。介護休暇以外にも利用できる制度を上手に利用して、効率的に両立する方法をあわせてご紹介します。
ポイント1:要介護者が「対象となる家族か」を確認する
介護休暇を取得する前に、要介護者が「対象となる家族か」どうかを確認しましょう。対象となる家族の幅は広いため、比較的取得しやすい制度といえます。労働者本人から見た対象となる家族は以下の通りです。
- 子
- 孫
- 父・母
- 祖父・祖母
- 兄弟姉妹
- 配偶者(事実婚を含む)
- 配偶者の父・母
なお介護関係における「子」の範囲は、法律上で親子関係がある状態を指し、養子も含まれます。要介護者が対象にならない場合には、通常の休暇・有給休暇などで対応する必要があります。
ポイント2:必要な時に時間単位での取得が可能
介護休暇は、必要な時に時間単位での取得が可能です。もちろん1日単位での取得することもできますが、通院の付き添いや手続きの代行など1日の休暇が必要ない場合に活用すると便利です。
対象家族が1人の場合には年間5日、対象家族が2人以上の場合には年間10日取得できるため、対象家族が1人の場合には、半日単位で利用をすれば10回に分けて取得することができます。
時間単位の取得を除外する労使協定を結んでいるケースでは、1日単位での利用になるため事前に担当部署へ確認しておきましょう。
ポイント3:「短時間勤務・所定外労働の制限」も検討する
できる限り介護に充てる時間を増やしたい場合には、介護休暇とあわせて「短時間勤務・所定労働時間の制限」を検討しても良いでしょう。さまざまな制度を組み合わせて活用すれば、介護をしながら退職せずに仕事を続けられる可能性が高まります。
短時間勤務は、短時間勤務制度のほかフレックスタイム制度・時差出勤の制度・介護費用の助成措置など、企業によって設けている制度が異なるため、取得前に確認しておくことをおすすめします。所定外労働の制限は残業を免除する制度ですが、事業主は労働者からの請求を拒むことができるため、確実ではありません。
なおどちらの制度も入社1年未満、1週間の所定労働日数が2日以下の労働者は、対象にならないため注意しましょう。
ポイント4:介護休業という手段も視野に入れる
介護休暇では仕事との両立が難しい場合、介護休業という手段も視野に入れてみましょう。以下、介護休暇と介護休業の違いを簡潔に表にしました。
介護休暇 | 介護休業 | |
取得可能日数 | 対象家族1人につき年間5日まで | 対象家族1人につき通算93日まで |
労働者の取得条件 | 入社6ヶ月以上 | 入社1年以上かつ申請後93日以内に退職しないこと |
給付金 | 一般的になし | 申請可能 |
介護休暇と比較して、介護休業は長期にわたって休暇を取得できることが大きな違いです。そのため介護や手続きの代行に専念できるというメリットがあります。どちらの制度を利用したら良いか、要介護者の身体状況やご家庭の環境に応じて判断しましょう。
介護休暇の申請方法
介護休暇の一般的な申請方法を把握しておきましょう。企業によっては、就業規則や社則で介護休暇に関する記載があります。必ず目を通して、休暇の取得方法が記載してあれば、それに従って取得を申請しましょう。
要介護者の介護状況を示す書類は必要ない
一般的に、介護休暇を取得するうえで要介護者の介護状況を示す書類を提出する必要はありません。育児・介護休業法で定める要介護状態とは、「2週間以上の期間にわたり常時介護を必要とする状態」を指しますが、必ずしも要介護認定を受けている必要はありません。
また企業が労働者から休暇・休業の申出を受けた場合には、書類の提出を求めることができるとされていますが、医師の診断書に限定されていません。「常時介護を必要とする状態に関する判断基準」は設けられていますが、厳密に従う必要はないとされています。
介護をする労働者の状況・事情に合わせて事業主は柔軟に対応して、労働者が仕事との両立ができるよう運用することが求められているのです。
申請は書面か口頭で
介護休暇は、一般的に書面か口頭で申請します。就業規則でメールや規定の書類などの指示がある場合には、それに従って申請しましょう。不要なトラブルを避けるためにも、まずは担当部署に相談する事をおすすめします。
介護休暇は取得する当日に申請することも可能ですが、一般的な休暇同様、同僚に迷惑をかけない配慮を忘れずに。入院や救急搬送などの突発の事態は仕方がありませんが、事前に日程が分かっている場合には、担当部署はもちろん同僚にも話しておきましょう。
普段から、雑談の範囲で家族の状況や今後の見通しなどを話しておくと周囲の理解を得やすくなり、積極的に介護休暇を利用できる環境が整いますよ。
介護休暇を利用して介護と仕事の両立を図ろう
介護休暇は、労働者が介護と仕事を両立できるよう定められた制度です。万が一対象となるご家族に介護の必要性が生じたときには、退職を考える前に介護休暇や介護休業を活用してみましょう。
労働者の休暇・休業の申し出があったときに、事業主が断ることは「育児・介護休業法」で禁じられています。介護休暇・休業においてトラブルが生じた場合には、都道府県の労働局、「雇用環境・均等部」に相談してみましょう。