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ショートステイを嫌がる理由は?原因と対策を徹底解説

ショートステイは、介護が必要な方が短期間入所できる施設です。入浴や食事といった生活の支援やリハビリなどが提供されます。ショートステイは、ご家族にとって介護負担の軽減に大きく役立つとともに、ご本人にとっては人との交流の機会を増やす、心身機能の維持・回復につながるなどがメリットです。

しかし慣れない場所に寝泊りするのに抵抗がある方も多く、嫌がる場合には強制もできず利用できていないご家族が多くいらっしゃいます。

この記事ではショートステイを嫌がる原因と対策、ショートステイでできるだけ快適に過ごすために事前にできることについて解説します。介護負担の軽減にお役立てください。

ショートステイを嫌がるときには原因を知るのが大切

ご家族がショートステイを嫌がる場合には、原因を見つけて適切な対策をとるのが大切です。

本人に聞く

まずはご本人としっかり話し合いましょう。嫌がる理由がわかれば効果的に対応できます。不安に感じているだけなのか、具体的な理由があるのかなどについて、ゆっくり聞いてみましょう。

スタッフから話を聞く

ショートステイに行った経験があったうえで次から嫌がる場合には、ショートステイのスタッフから話を聞くのが有効です。レクリエーションや食事時間の様子、ほかの利用者との交流の状況などを聞け、解決のヒントになるでしょう。またショートステイのスタッフは、利用者の対応に慣れています。対処法のヒントがもらえるでしょう。

ショートステイを嫌がる原因

ショートステイを嫌がる原因としてよくある例を紹介します。

以前行ったときにつまらない・嫌な思いをした

ショートステイに行った経験がある方は、つまらない思いをしたり嫌な思いをしたりしていたら次から行きたくなくなる場合があります。

ショートステイではレクリエーションやリハビリなどが受けられますが、スケジュールがいつも埋まっているわけではありません。何もない時間に手持無沙汰でつまらないと感じる方がいます

自宅で過ごしたい

20歳以上の成人を対象にした「将来受けたい介護」についてのアンケート調査をご覧ください。将来「介護を受けたい場所」についての回答結果は以下の通りでした。

  • 可能な限り自宅で介護を受けたい…44.7%
  • 特別養護老人ホームや老人保健施設などの介護保険施設に入所したい…33.3%
  • 介護付きの有料老人ホームや痴呆性高齢者グループホーム(痴呆の高齢者が共同生活を営む住居)などに住み替えて介護を受けたい …9.0%

半数近くの方が自宅で介護を受けたいとわかります。

家族以外に介護されたくない

先ほどの調査で、自宅での介護を希望した方に理由を聞いた結果を示します。

(引用元:内閣府政府広報室「高齢者介護に関する世論調査」)

住み慣れた自宅で生活をしたいとの理由に続いて「家族以外の人から介護を受けるのが嫌だ」と思っている方が多いとわかりました。

不安

グラフの下から4番目には「具体的に施設を知らず、不安だから」との理由も12.9%ありました。ショートステイに行ったことがない方は、何をする場所なのか知りません。知らないところに突然泊まるのは不安に感じて当然といえるでしょう。

次からは、実際にショートステイを利用している方から聞いた「ショートステイを利用して感じていることや悩み」をもとに紹介します。

周囲への我慢・遠慮

ショートステイを利用する場合に、周囲に対して我慢・遠慮している方がいるとわかりました。何かしてほしい、あるいは嫌だと思うことがあっても、周囲に遠慮して言い出しにくいようです。

自分のペースで生活できない

「自分のペースで生活できない」との悩みもありました。家と違ってショートステイでは食事時間や入浴時間などが決められています。自分のペースで生活したい方にとってはストレスになるといえるでしょう。

役割がない

家では自分の役割があった方でも、ショートステイではスタッフが身の回りの世話をしてくれます。在宅生活から施設に入所する際に感じる最も大きなギャップとして「役割がなくなること」だとの研究報告があります。

役割をもつのは「自分は必要とされている」と感じ、生きがいにもつながるのです。ショートステイに入所して突然役割がなくなると、必要とされていないと感じる可能性が考えられます。

(参考:「日本における高齢者ショートステイに関する研究の動向」

ショートステイを嫌がるときの対処法

ショートステイを嫌がる原因をもとに、考えられる対処法について説明します。

どんなところか説明する

初めて利用する場合には、どのような場所で何をするのかが想像しにくいでしょう。可能な場合は一緒に見学するなどして雰囲気を確認しておくとよいでしょう。また見学できなくても、1日の流れなどを丁寧に説明しておくのが大切です。どのようなスケジュールで過ごすのかわかるだけで、不安な気もちがやわらぎます。

ケアマネジャーに相談する

介護に関して困ったときにはケアマネジャーに相談するのが有効です。ショートステイを嫌がっていた方に対して、ケアマネジャーが繰り返し説得した結果、定期的に利用できるようになった事例が報告されています。説得した内容としては「家にいたいのであれば家族が精神的にも息抜きする必要がある」などでした。

ケアマネジャーはいろいろな利用者の相談にのってくれます。介護サービスを嫌がる方への対応経験も豊富なため、適切なアドバイスが受けられるでしょう。

利用者に対する説得だけでなく、デイサービスの利用を考えたり施設を変更する相談にのってくれたりします。困ったときにはまず相談してみましょう。

(参考:厚生労働省「仕事と介護の両立モデル」)

合ったショートステイを選ぶ

ショートステイは、施設ごとに雰囲気や居室空間がさまざまです。プライバシーを大切にしたいのか、誰かと交流したいのかなどによって、向いている施設や部屋が異なります。できるだけ希望に沿った施設を選ぶと嫌な気分もおさまる可能性があるでしょう。

また、認知症の方は対応に慣れているショートステイを利用するのも1つの方法です。グループホームは認知症と診断されている方のみが利用できる施設で、ショートステイを受け入れている施設もあります。

認知症の方へのアンケート調査では、9.3%の方が認知症の症状が理由でショートステイやデイサービスなどの利用を断られた経験があるとわかりました。

認知症の方やご家族にグループホームを選んだ理由を聞いた結果を表に示します。認知症の方にとってグループホームは、ほかの施設よりも適応しやすく、ほかでなじめなかった方でも選びやすい施設だといえるでしょう

(引用:厚生労働省「認知症対応型共同生活介護、認知症対応型通所介護等の報酬・基準について」)

ただしグループホームは数が限られているためショートステイに対応している施設は少数です。グループホーム以外にも認知症の方の対応に慣れている施設があるので、ケアマネジャーに相談しながら探してみましょう。

やりたいことが充実しているショートステイを選ぶ

ショートステイによってはバスツアーや趣味活動に力を入れている施設があり、積極的に利用する方がいます。リハビリが充実している施設では、運動機能を維持したり高めたりする目的のために利用される場合もあります。

リハビリがしたい、趣味の時間をとりたいなどご本人とも相談して、より希望に近い施設を選べるとよいでしょう。

施設に相談する

嫌がる場合にはショートステイ先の施設に相談するのも効果的です。

1人が寂しい場合には気が合いそうな人と席を近くにしてもらう、プライバシーがほしいなら部屋に1人でいる時間を作ってもらうなど、個別に対応してもらえる場合があります。

不安や不満な点をご本人に確認した上で相談してみましょう。特にご本人が周囲に遠慮して自分からは言い出せない方の場合は、ご家族からお願いしておくとよいでしょう。

施設での役割を持ってもらう

ショートステイ利用者を観察した論文では、ショートステイに適応した方の特徴として「施設内での役割を見出した」「一緒に過ごす相手を見つけた」などがありました。

ショートステイには、利用者に役割をもってもらうのを重視して取り組んでいる施設があります。利用者に食事の準備、片付け、掃除などできることを手伝ってもらうことが、やりがいにつながっています。

何か担えそうな役割があればやらせてもらうようにお願いするのもよいでしょう。

ゆっくり慣れる

初めての場所で宿泊するのが不安な方は、ショートステイに併設しているデイサービスに通い始めて、慣れてからショートステイを利用するのも効果的です。通い慣れるとスタッフや施設の雰囲気にも慣れるでしょう。

本当に慣れるのかとご心配なご家族がいるかもしれません。ショートステイ利用者に対して、利用の前と後で神経精神症状(不安や幻覚、興奮、うつなど)が変わるかどうか調べた研究報告があります。ショートステイを2日間利用した後の評価では、神経精神症状が悪化することなく改善する方が多い結果となりました。

海外の論文でも、ショートステイの初回利用時には問題行動が増える方がいましたが、複数回利用する方では特に悪化が認められないとの結果がでています。

以上から、精神的に不安定になりやすい方でも、ショートステイを繰り返し・継続して利用する中で、慣れていく可能性があるといえるでしょう。

(参照:「ショートステイ利用前後の要介護者の神経精神症状の変化および神経精神照応の2日間評定の信頼性・妥当性の検証」

ショートステイを嫌がる前にできれば伝えておこう

ショートステイを利用するにあたって、家族とスタッフで伝え合いたい情報について調べた研究報告があります。対象者は認知症のある利用者でしたが、さまざまな方にあてはまる項目もあります。参考にしてください。

利用者の健康管理

利用者の安全のためにも、病気や持病に関する情報の伝達は必須です。症状がしんどいのに対応してもらえないと行くのが嫌になる原因になります。

初めて会うスタッフでもわかるように薬や症状、対応について細かく伝えておきましょう。

ショートステイで継続したいこと

在宅での生活とショートステイでの生活のギャップを埋めるためにも、家で行っていて継続したいことについてはきちんと伝えておきましょう。家族が伝えたい情報やスタッフが聞きたい情報としては以下の項目がありました。

  • 排泄や睡眠などの生活リズム
  • 継続したい生活パターン
  • 継続したいご本人のできること(家での役割など)
  • 寝具の種類やトイレの位置など生活環境

ご本人が適応しやすくするためにも、継続したいことはお願いするとよいでしょう。

コミュニケーション上の注意点

難聴やことばの理解が難しいなどの方は、コミュニケーションしやすい方法についても伝えておきましょう。言いたいことが伝わらなければ行きたくなくなる可能性が高まります。

左右のどちら側から声をかける、筆談にするなど、わかりやすいコミュニケーション方法があれば伝えておくのが大切です。

本人の今までの人生

スタッフや周囲の方と楽しくやりとりするためには、ご本人の今までの仕事や誇りにしていること、大切なことなどを伝えておくとよいでしょう。会話の糸口ができれば人との交流が楽しくなります。

(参照:「短期入所を利用する認知症高齢者の家族とケア提供者が伝え合いたい情報」

ショートステイを嫌がるときには1人で抱え込まずに相談しよう

ここまでショートステイを嫌がる原因や対処法について説明してきました。ショートステイを嫌がられると、あきらめて利用しないご家族が多くいらっしゃいます。しかし在宅生活を続けるためにはご家族の介護負担を軽くするのは重要です。

困ったときにはご家族だけで悩まずにケアマネジャーやショートステイ先などに相談するのが大切です。緊急のできごとなどで慌てないためにも、徐々に慣れながらショートステイの利用をすすめられるとよいでしょう。

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