老人ホームに入る時住民票を移さないとダメ?制度や注意点を知って考えよう
ご家族が老人ホームに入居する際に「住民票を移さないとダメ?」「移すデメリットはない?」とご不安な方がいるのではないでしょうか。
本記事では、老人ホームに入居する際に住民票を必ずしも移す必要はないこと、移すメリット・デメリット、知っておくとよい法律や手続きなどについて説明します。
記事を読めば、ご家族の住民票をどうすればよいのか考えられるようになるでしょう。よく理解して後悔しない選択にお役立てください。
老人ホームによっては住民票を移す必要がある
入居する際に住民票を移さなければいけないかは、施設によって異なります。
結論からお伝えすると、地域密着型サービス以外の施設であれば、必ずしも移す必要はありません。サービスごとの違いを説明します。
移さなくても入居できる施設が多い
地域密着型サービス以外の老人ホームであれば、移さなくても入居できます。
ただし詳しくは後述しますが、移さないと入居先の地域のサービスが受けられないなどのデメリットが生じる可能性があります。
また総務省では、新しい居住地での行政サービスを確実に受けられるようにするために、引っ越した場合には住民票の異動を法律上の義務としているのです。
正当な理由がなく届け出ない場合には、5万円以下の罰金の可能性が記載されています。
一般的に正当な理由には、以下のような例が挙げられます。
|
施設に入所する方の中には、次の施設に行く間の一時的な利用や、入院と施設入所を繰り返して短期間の見込みの方がいらっしゃいます。
その場合に毎回移すのは煩雑で大変なので、現実的ではないでしょう。
とはいえご家族の状況が「正当な理由」にあたるのかどうか気になる場合には、お住まいの地域の役所などに相談することをおすすめします。
(参考:総務省「住所の異動届は正しく行われていますか?」)
(参考:SUUMO「引越しで住民票を移さないとどうなる? メリット・デメリットを紹介!」)
地域密着型サービスは地域に住民票を移さないと入居できない
一方、地域密着型サービスの場合は、住民票を地域に移さないと入居できません。
地域密着型サービスとは、要介護者の住み慣れた地域で生活し続けられるように、身近な市町村から提供される支援です。自治体によって異なりますが、基本的には市町村にお住まいの被保険者のみが利用できます。
入居型の地域密着型サービス は次のとおりです。
|
地域密着型サービスを利用する際には、先ほど説明した項目も含めて以下の注意点があります。
|
例えば、介護が必要になったご両親を自分の居住地の地域密着型サービスに入居してもらいたい場合には、施設利用の直前に住民票を異動するのではなく、入居に先だって、数ヶ月~1年程前からご自分の自宅に移しておく必要があるかもしれないということです。
目当ての施設があるのであれば、自治体の決まりを事前に見ておくとよいでしょう。
老人ホーム入居時に住民票を移すメリット
ここからは住民票を移す、以下のメリットについて説明します。
|
ご家族の自宅にだれも住まない場合、定期的に郵便物を取りに行くのは手間でしょう。ホームに住所変更しておけば、銀行や市町村からの手紙、期限がある郵便物などを確実に受け取れるのがメリットです。
また、お住いの地区によって介護保険料の費用や、受けられるサービスが異なります。
住民票を異動することで、介護保険料が安くなったり、新たなサービスが使えたりする場合があります。
まずは現在の住所と新しい居住地での保険料やサービスを比較してみるとよいでしょう。
老人ホーム入居時に住民票を移すデメリット
老人ホーム入居時に住民票を移すデメリットについても説明します。
大きなものとして保険料が高くなる可能性や手間が考えられますが、保険料に関しては「住所地特例制度」を利用すれば解決できます。1つずつ説明します。
デメリット
住民票を移すデメリットは次のとおりです。
|
住所によって介護保険料が高くなる可能性がありますが、その場合には次章の「住所地特例制度」の利用を検討しましょう。
次はプライバシーの問題です。施設にすべての郵便物が届くと、個人的な手紙なども施設に届き、見られてしまう恐れがあります。情報を知られるのが気になる場合には、家族が来るまで手紙を保管しておいてもらうなどの対応を、施設に依頼するとよいでしょう。
また住所変更すると、国民健康保険やクレジットカード、銀行などの住所も変える必要があり、手間がかかります。施設を短期間で移ったり入院と施設入所を繰り返したりする場合には、その都度手続きが発生して負担が大きくなる可能性があるのです。
住民票を移すと保険料が高くなるなら住所地特例制度を利用
施設に入居する際に保険料が高くなるようであれば、「住所地特例制度」が利用できます。
住所地特例制度とは、施設に住民票を移す方だけを対象に、介護保険料を前に住んでいた自治体に支払い続けられる制度です。
介護保険の原則は「住民票がある市町村に支払う」ですが、介護保険施設が多い自治体に、支払いの負担が集中するのを防ぐために設けられました。
制度の対象施設は次のとおりです。
|
地域密着型以外の多くの施設が該当します。上記の施設に入居する予定で住民票を移す予定があり、かつ新しい居住地の介護保険料が高くなるようであれば、制度の利用を検討するとよいでしょう。
この制度を利用する場合の状況を整理して、以下にまとめました。
|
まずは元の居住地と新しい居住地の保険料やサービスを見比べたうえで、どちらがよいのかを決めるとよいでしょう。
老人ホーム入居時に住民票を移すやり方
ここからは実際に老人ホーム入居時に住民票を移す流れについて確認していきましょう。
|
元の居住地、新しい居住地での手続きに分けてまとめました。また、それぞれで通常の引っ越し手続きと、介護保険被保険者特有の手続きがあるので、必要な書類や注意点と併せて説明します。
元の居住地で必要な手続き
元の居住地で必要な手続きは、次のとおりです。
|
まずは通常の引っ越しと同様に、転出日前後の14日以内に転出届を提出します。同じ市区町村内での引っ越しの場合には、転出届の代わりに「転居届」を提出するだけで終了です。
次に、介護保険関連の手続きについて以下の表にまとめました。
引き続き介護保険料を現住所で支払うか、新住所に変更するかの希望に合わせて、必要な方の手続きをします。
介護保険料の支払い先 | 住所地特例制度の利用 | 手続き |
新しい居住地の市町村 | しない |
|
前に居住していた市町村 | する | 「介護保険住所地特例適用・変更・終了届」を提出 |
介護保険の支払いも新しい居住地に変更する場合には、介護保険被保険者証を返却して「受給資格証明書」の発行を依頼しましょう。
受給資格証明書とは、介護保険で要介護認定されている方が他の市区町村へ引っ越す場合に、元の居住地の要介護度(要支援)を引き継いでもらうための証明書です。提出すると、元の居住地で「要介護度2」の方であれば、転居先でも認定調査を受けずに「要介護度2」と引き続き認定されます。
なお、マイナポータルを利用して転出手続きをする場合には、受給資格証明書は必要なくなる場合もあるので、窓口で確認しましょう。
住所地特例制度を利用して、介護保険の支払いは元の居住地のままにしたい場合には「介護保険住所地特例適用・変更・終了届」を提出しましょう。元の居住地に提出すれば新しい居住地での手続きは必要ありません。
新しい居住地での手続き:14日以内が大事
新しい居住地で必要な手続きは、次のとおりです。
|
まずは転入した日から14日以内に、転出証明書を提出します。
併せて介護保険を異動する方は「受給資格証明書」を早めに提出しましょう。転入届を提出してから14日以内に提出しないと、再度介護保険の申請からやり直しになるので、注意が必要です。
銀行などの住所変更手続き
転居手続きがすんだら、忘れずに以下の住所変更手続きをしましょう。
|
変更手続きをしておかないと大切な書類が届かず、手続きに困る場合があるので、1つずつ確認しておきましょう。
老人ホーム入居時には住民票を移すメリット・デメリットを知ってよく考えて決めよう
老人ホームに入居する際に、住民票を移すほうがよいかどうかは、施設の種類や入居期間などによって異なります。ご家族の状況に合わせて検討しましょう。
転居先の介護保険料が高くなるのだけがネックで住民票を移せないのだとしたら、住所地特例制度を利用すれば解決できます。
ご本人・ご家族にとってベストな選択をするためにお役立てください。