フレイルとは!?実態と原因を知って自分に合った予防法を確立しよう
「フレイル」という言葉を知っていますか?フレイルは、健康な状態から要介護状態への移行段階と位置づけられています。
フレイルについて理解を深めることができれば、適切なタイミングで介入・予防することが可能です。本記事では、フレイルの実態や原因のほかチェック方法をご紹介します。できることを生活に取り入れて、健康寿命を延ばす努力をしてみませんか?
フレイルとは
フレイルとは、年齢を重ねることで体力がなくなったり、気力が衰えたりして手助けや介護が必要になる状態のことです。どのような状態なのかを確認していきましょう。
どんな状態?どんな症状?
フレイルとは病気ではありませんが、健康な状態から要介護状態への移行段階を指します。大きく4つに分類され、年齢を重ねることで現れる症状を示しています。
- 身体的フレイル
- 精神・心理的フレイル
- オーラルフレイル
- 社会的フレイル
以下、具体的にご説明しましょう。
1.身体的フレイル
身体的フレイルとは、運動器の衰えにより立ち上がりや歩行などの日常生活に影響を及ぼす状態を指します。
年齢を重ねて筋肉量が低下する「サルコペニア」や「ロコモティブシンドローム」という病態が中心となり、つまづいたり立ち上がる時に手を付いたりすることが多くなります。整形外科やデイサービスなどで、積極的なリハビリを取り入れることで維持・回復が可能で、生活の質の向上が期待できます。
2.精神・心理的フレイル
精神・心理的フレイルとは、意欲低下や軽度の認知機能障害、鬱などを指します。退職や配偶者・友人との別れ、それに伴う環境の変化に適応できず症状が現れます。
万が一症状を疑う場合には、精神科・老年内科・神経内科などに早めに相談するようにしましょう。症状に応じて適切な薬を処方してくれることがあり、家出や自殺など最悪の事態を防ぐことができます。
3.オーラルフレイル
オーラルフレイルとは、年齢を重ねることで起こる口腔機能の低下を指します。口腔機能が低下することで、食事やコミュニケーションが徐々に困難となり、心身の機能低下を招くのです。
食事が困難になるとビタミン・ミネラル・たんぱく質といった栄養素が不足し、運動機能・生理機能を保つことが困難になります。コミュニケーションが困難になると対人関係を避けるようになり、結果としてフレイルから要介護状態に移行する可能性が高まるのです。オーラルフレイルの相談は、歯科医院のほか歯科衛生士が訪問してくれる市区町村もあります。
4.社会的フレイル
社会的フレイルは高齢者が社会参加をしなくなることで、自宅に閉じこもりになる状態を指します。定年退職を迎えても元気な高齢者が多い近年。活力を失わないためにも、就労を続けたりボランティア活動に参加したりすることをおすすめします。
コロナ渦の昨今、人が多い場所に不安を感じる方のためにオンラインでつながる場所を提供している団体もあります。お住まいの地域でできることを探してみましょう。
進行するとどうなるの?
80歳以上の高齢者は約35%がフレイルだというデータがあります。年齢を重ねるごとに有症率は増加し、進行すると要介護状態になったり死亡率が高まったりするのです。
たとえば健康な方なら数日で完治する風邪でも、フレイルの方の場合には肺炎を発症したり、身体に負担が少ないとされる手術でもフレイルの方の場合には死亡率が高くなったりすることが起こり得ます。すると必然的に入院期間が長くなり、寝たきりや認知症などを引き起こすことにつながるのです。
フレイルの原因
フレイルは、加齢に伴うさまざまな変化が原因になります。原因は一つではないことも多く、互いに影響して負のスパイラルに陥ることも。その結果フレイルから要介護状態となります。
フレイルの原因となる加齢に伴う変化は以下のものがあります。
- 活動量が減る。
- 社会的な交流が減る。
- 身体機能が低下する。
- 活力がなくなる。
- 循環器疾患や呼吸器疾患など慢性疾患を患う。
- 孤独になる。
いずれの原因も環境の変化が影響していることが多いため、可能なら就労や社会活動、ボランティアを意識した生活をすることをおすすめします。
簡単にできる!フレイルチェック
フレイルチェックは、世界的に統一された基準がなく、国内においてもいくつか評価法があります。ここでは、より簡単にフレイルをチェックできる「簡易フレイルインデクス(簡易FI)」をご紹介します。
質問内容 | 評価基準 | |
6ヶ月間で2~3㎏の体重減少がありましたか? | 1.はい | 0.いいえ |
以前に比べて歩く速度が遅くなってきたと思いますか? | 1.はい | 0.いいえ |
ウォーキング等の運動を週1回以上していますか? | 0.はい | 1.いいえ |
5分間のことを思い出せますか? | 0.はい | 1.いいえ |
ここ2週間、わけもなく疲れたような感じがする。 | 1.はい | 0.いいえ |
簡易FIは「CHS基準」と呼ばれる評価法をより簡便にしたもので、3項目以上該当する場合をフレイル、1~2項目に該当する場合をプレフレイルとしています。
フレイルに該当したら
ご紹介したチェック表でフレイルに該当したら、どのように対処すればよいかをご紹介します。かかりつけ医がある場合には、以下の点を留意して予防・改善に努めてくれるため是非相談してみましょう。
対策1:持病をコントロールする
持病がある方がフレイルに該当したら、持病のコントロールをすることが重要です。フレイルを改善するためには、「本人の意欲」が大事だからです。
医師の指導のもと持病のコントロールができれば、意欲が沸き「運動ができる」「栄養バランスを考えた食事ができる」ということにつながります。必ず外で運動する必要はなく、家の中で毎日続けられるものから始めましょう。ベッド上で足を動かしたり、掃除機をかけたりなども立派な運動です。運動と食事をセットで行うとより効果的です。
対策2:感染予防に努める
フレイルに該当したら、これまで以上に感染予防に気を配りましょう。感染症を患うことで、入院やベッド上の生活が長引き、要介護状態になることがあります。もちろん本人だけではなく、家族も感染症予防に努めなければなりません。
主治医と相談して体調に問題がなければ、本人・家族ともにワクチン接種を受けましょう。ワクチン接種を受けることで抵抗力がつくことはもちろん、「予防」の意識を高めることができますよ。
対策3:フレイルとサルコペニアとの違いを知る
フレイルとサルコペニアとの違いを知ることもフレイルを理解するうえで重要です。サルコペニアは「筋肉量の減少」を表すのに対して、フレイルは「身体能力が低下し、要介護状態に至る一歩手前」の状態です。
いずれも加齢や栄養不足・活動量の低下などが原因となっていて、お互いに関連することが多いため混同しがちです。しかしフレイルは筋肉量の減少に限定せず、体重減少や倦怠感が含まれています。サルコペニアが原因でフレイルに陥ることもあり、「フレイルの方が大きい概念」ととらえると理解しやすいでしょう。
フレイル予防には
フレイルを予防するためには、以下のことを心がけましょう。
①適度な運動を心がける
フレイル予防には、適度な運動を心がけましょう。運動をすることで身体機能が向上し、活動量が増えたり、人との関わりを持つ機会が増えたりします。
適度な運動は「続ける」ことが大事なので、人と一緒に運動するのがおすすめです。「約束」をして他愛のない話をしながら運動すれば認知症の予防になり、運動が苦手な人でも継続することができるでしょう。運動前のストレッチと水分補給を忘れずに。
②食事に気を付ける
食事に気を付けることもフレイル予防になります。年齢を重ねるとともに、食事量や食欲に変化が生じるためです。まずは、規則正しい時間に食事を摂ることを心がけましょう。
運動ができる身体をつくるために、筋肉のもとになるたんぱく質の摂取も大切です。欠食が習慣になっている方は、時間になったらテーブルに着くことから始めてみましょう。人と話しながら、野菜ジュースやフルーツジュースを飲めれば、徐々に食事に移行することが可能になります。
③人との関わりを大事にする
人との関わりを持つことも、フレイル予防になります。厚生労働省の研究では、社会的フレイルは要介護新規認定リスクが2.8倍高いとされているため、家庭とは別に「社会の一員」として居場所を作りましょう。きっと良い刺激を受けられます。
趣味やボランティア、町内会など、自分が関われる場所を探してみましょう。市区町村のホームページや市報、回覧板などで情報を得ることができますよ。身体状況に問題がなければ、就労を続けるのも良い方法です。
フレイル予防に無理なく楽しく継続できることを生活に取り入れよう
フレイルとは、健康な状態から要介護状態への移行期を指します。適切に介入することで予防・回復が可能なので、食事・運動を「いかに無理なく継続するか」を考えてみましょう。
適度に人と関わりを持って、楽しい雰囲気で取り組むことをおすすめします。フレイルの兆候が見られたら、高齢者本人はもちろん、家族や友人から指摘できる環境も大切です。健康寿命を延ばして、人生を謳歌しましょう。